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良き子育て・脳育ての真理は単純である。雑誌『致知10月号』の掲載記事に寄せて

 

 9月になると来春の入園に向けて私共の園にも見学の保護者が数多く訪れる。保育園だと未だ乳飲み子赤ちゃんがいる両親も多く、我が子を可愛がり愛しい様子が一杯伝わってくる。私はふとした来園者でも良き子育てに繋がって欲しい一念で、お節介かなと気にしつつ、ついつい話が長くなる。子育ては「脳育て」。脳の成長は心身のそれと連動する。幼児期は聴覚・視覚・臭覚・味覚・触覚の五感からの刺激に反応して、先に感覚脳が成長する。よって、良質の脳・心身の成長を期待するならば、幼児の日々の生活環境や体験が良質な刺激にさらされていることが大切と話す。特に母国語の定着・操る能力はいつの間にかどの子も就学前には獲得するが、その質を問えば刺激の内容が関係する。音楽的感性も聴覚が盛んな幼児期での体験なら、母国語同様に一生を支える能力や感性が宿る。日々の散歩や戸外遊びも五感を刺激し、個より集団なら見て真似る人間の特性から刺激の効能も殊更増してくる。味覚も身体ばかりか心の成長にも影響が大きいことは近年では常識となり、幼児期が基本となる重要性は大人が知る真理である。「インプットに嘘はない」・「良きインプットは良きアウトプットが表れる」は私が半世紀沢山の事例から得た真理で年々痛感する。
 刺激の質そのものも肝心だが、与え方も重要である。言葉でも先ずは日々の母子のアイコンタクトでの語りかけが基本と話す。アイコンタクトは母から幸福ホルモンのオキシトシンが分泌され、母子とも心が安心安定することは誰でも実感する。合わせて快活なやり取りからセロトニンやドーパミン等のホルモン分泌も盛んとなり、併せて心地良い音楽の効果と読み物絵本での語彙増やしが鍵となり、幼児期の感覚脳の著しい成長に繋がるのである。留意すること・コツは母親の笑顔にある。愛情ホルモンの効能を信じて実行する。良き刺激の繰り返しが言葉の質にも影響するのでお母さん自身が好きな本を沢山用意し、自ら楽しんで読むが良いとアドバイスする。一方、「悪しきインプットは悪しきアウトプットが表れる」も真理である。近年はスマホやタブレット等の電子機器が幼児の健全な脳の成長を歪めている。「この子は動画を見せると泣き止むんです」という保護者がいる。よかれと思ってやっているのだろうが、やっていることは感情の遮断である。言葉の遅い子や滑舌が未発達の原因の十中八九はこれで、一昔前のテレビの見せっぱなし以上に悪い影響を感じる。時折、来園者との育児相談で「言葉が遅いや落ち着きのない子の日常にはスマホ等の利用に原因がある」と話す。お節介と思われても敢えて「今日からスマホは止めましょう」と話す。「インプットに嘘がない」ので「子供がチョロチョロ、フラフラせず落ち着いてきた」との嬉しい報告には安堵する。
 子育ての原理原則の真理は「脳育て」から見ると単純で明解である。五感に対しての質の良い刺激が日々豊富であれば良質な脳の成長に繋がることは間違いない。但し、子供にそれを整える事は出来ない。実行してあげられるのは先ずは母親であり、周囲の大人との協力共有共感がその効果を支える力となる。よって、母親自身が良き刺激を認識し周囲とも子育て観を共有して仲良くし笑顔で実行することが肝心なのである。
 さて、今月の学園便りも月刊誌『致知』の掲載記事である。先月は子育て本の別冊『母』からの取材記事を紹介し、昨年7月号は本園教育事情が紹介され学園便りでも紹介し今回で三回目となる。『致知』とは最近やり取りが頻繁となり、今月初めには先に紹介の『国語に強くなる音読ドリル』(致知出版社)が発行された。本を開くとわかるが、本来の石井式とは異なり読み漢字は総ルビ付きである。仮名が読めれば大人も子供も楽しめる。言葉には言霊があり、お話絵本のように母親が幸福ホルモンを分泌させて読み聞かせるだけでも効能があり、小中学生も年配者にも良き日本語を朗誦することは脳を覚醒する良き習慣と自賛している。
 7月下旬に編集部のご厚意で尊敬する脳科学者で医師の林成之先生のご自宅を訪問し、直接先生から話を伺う機会も得た。子育てと脳科学の関連性についてはMS創始者の譜久里勝秀先生が感覚脳を十分刺激すると後からの知育脳もよく発達するとの脳科学の知見記事から興味を40年前位に知った。その後2001年に脳科学者の澤口俊之氏から直に話を伺い、幼児期での脳育ての重要性を肌で感じられ身近に思えるようになった。決定打は林成之先生の著書との出会いである。特に『子供の才能は3歳、7歳、10歳で決まる!』幻冬舎発行は、私が子供の成長から目にして肌で感じてきたことの大半が解かり易い先生の解説と殆ど重なり喜んだ。子供達の良き成長は日々の刺激の脳の成長から当然の帰結と認識し理解していたが、直に話を伺えることは本当に楽しみであった。副園長と園長補佐の妻も同行し、先生の奥様の温かいご対応も相まって、正に様々なことの学びとなり、感謝感激の貴重なひと時となった。
 子育ては日々を振り返り嬉しさもあるが、日々人に伝えることの難しさを実感する。こんな易しい真理さえも伝わらない現実に落胆もあるが、日々を謙虚に反省しスタッフと一丸となり仕事に邁進する所存である。
今回も記事が長くて恐縮するが全文を紹介する。各位にはご一読お願いする。

 


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