今月のお知らせ
園長コラム
いずみ写真館
学校法人小泉学園
東京いずみ幼稚園
東京都足立区佐野1-20-10
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 先日、毎年恒例の園見学会を催した。「ぴよぴよサークル」の一環で行っているが、今年も多くの未就園親子の皆さんに参加を頂いた。キンダ―クラブの面談も控えている時期なので、私も保護者の皆さんには耳の痛い話も意図的にしている。というのも、子育てに真最中の親というのは目の前の子育てに精一杯で、将来を見据えた「子育てで肝心なこと」を見失いがちだからである。毎年私は必ずこの台詞を使っている。「子育ての究極の目的は何だと思いますか。それは自分で飯(メシ)が食えるようにすることでしょう。」人によっては、「なんと実も蓋もない話だ」「当たり前のことじゃないか」と感想をお持ちの方もいるかもしれないが、実はこの肝心なことに答えていないのが、現在の幼児教育の大問題だと私は思っている。そのため、自分の著書でもわざわざ取り上げた経緯がある。
 見学会を過ぎたある日、書店で経済誌『週刊東洋経済』(2/11発行)のバックナンバーのタイトル『21世紀の読み・書き・そろばん「食える子」を育てる』が目に入った。この雑誌は、一昨年に『教育の経済学』特集で本園が取材を受けたこともあり、度々チェックしている。取材を受けるまでは幼児教育は経済誌とは縁遠いと思っていたが、最近はノーベル経済学賞受賞者の米シカゴ大学ジェームズ・ヘックマン教授が就学前の幼児の「非認知能力」重要性を唱えたことが広く認知されるに至り、若い親世代を対象にした幼児期の効果的な教育事情と経済的効用を絡めて紹介する記事や書籍が増えているようである。
 さて、掲記のバックナンバーの中にあった「習い事で非認知能力を伸ばせ」という記事を紹介したい。こちらは幼小が対象となる事が多く興味深い所である。ヘックマン教授の研究などのとおり、米国の教育政策は数値的なものを根拠に整えるので、より説得力が感じられる。以下引用…「コロンビア大学の研究グループ2008年の発表論文によると、10代の男女1000人を26歳までに長期追跡調査したところ、習い事や地域活動といった課外活動を2年以上続けた人は、1年しか続けなかった人に比べ、成人した時点でより高学歴かつ高収入になったという。また、2年以上続けた人の中でも、習い事などにかける週当たりの時間が長い方が、より高い学歴と収入を得ていた。習い事と続けることと学歴・収入の上昇とをつないだのは、「非認知能力」と呼ばれる力だ。学力テストの点数やIQ(知能指数)試験で図ることができるスキルは認知能力「この子は能力が高い」といって思い浮かべるのはこちらだ。一方で、勤勉性や意欲、忍耐力、思いやりといった数値化が難しいスキルを非認知能力と呼ぶ。そしてこの非認知能力こそが、学力や年収、すなわち社会性・経済的な成功を支えており、生きる力の源泉でもあるという見方が世界の教育学においてクローズアップされている。世界的ベストセラー『GRIT』(邦題『やり抜く力』)の著者米ペンシルベニア大学アンジェラ・ダックワーク教授によると、何らかの活動を長期間かけてやり抜くことはそれ自体に忍耐力が求められ、将来のやり抜く力を育むとしている。よって、習い事をしている子供が急に「やめたい」と言い出すことは珍しくないが、単に「上手くならない」「あきた」「つらい」等でやめたいと言ったら、親は毅然と「続けなさい」と答えたほうが、子供の将来のためになるだろうという。また、非認知能力を「何歳の時にどう鍛えるか」については、米ミシガン州での「ベリー就学前計画」の実験から、鍛錬は幼児期に行うことがより効果的と結論付けている。同計画では裕福ではないアフリカ系米国人123人に対し、3〜4歳の時点で2年間にわたって介入実験を行い、彼らが40歳になった時点で、似たような生まれの人と比較した。すると彼らは学歴や所得、持ち家率が高く、生活保護受給率や逮捕者率などは低いことが判明した。そして実験で育まれた「学ぶ意欲」という非認知能力が長い間消失することなく数十年位という驚くほど長期間にわたって維持されていたと結論付けた。こういった研究結果を踏まえると、単に「どんな学力や知識、スキルが身に付くか」といった基準で選ぶだけでは物足りなく、一見あまり役立たないような習い事であっても根気よく続ければ、人生の大きな糧となるというのが最新の教育学や脳科学の答えだ。受験に役立たない等でやめたり長期休止したりは、非認知能力の視点では、却って人生のマイナスといえる…」以上。
 概して「認知スキル」は後からやった人にも早い時期に追いつかれるが、「非認知能力」は「三つ子の魂百まで」の言葉どおり人格に内在化され、人生の後々まで効果が期待できる、ということである。まさに私が子育ての具体的な目標と考える「【食いはぐれない子】にするために、幼児期にその基礎力(心の育み、非認知能力)をつける」ということが科学的にも正しい、と云えるだろう。「うちの子にも何か習い事を…」と考えている各位には、この点を踏まえて簡単に投げ出さないように通わせてほしいと思った次第である。

 
小泉 敏男
2017年7月号